• テキストサイズ

ワールドトリガー 瞳に光を

第8章 真逆と決定付けるもの


どことなく嬉しそうに話を進める太刀川に、絵梨は少し困惑していた。

「どの辺まで覚えてないんですか?」
「えっと……こっちでのことはほぼ全部といえばいいのかな……。近界に行っていたってことは、ボーダーに所属してたって事になるとは思うし、実際みんなもそう言ってるし。」

まあ間違っちゃいないな、と太刀川は言った。
風間は変わらず近くで話を聞き続けている。

「そもそも、今日迅と貴方達が戦ったのは何故? 何も対立する必要なんてないんじゃない……?」

結局絵梨が一番気になっていたのはこれだ。
戦争をするわけでもなく、ただ市民を守るために活動するのがボーダーで、近界民との大きな違いでもあることは今更だ。
トリオン兵との戦闘があったわけでもないのに基地の外で換装し、あろうことか仲間と剣を交えるのは何故か。

「迅達玉狛の考え、本部、そして城戸司令の意向の違いによるものだ。特に城戸司令と玉狛とでは考え方が全くの正反対となる。既に風刃を置く玉狛に更に黒トリガーが増えるとなれば、人数で勝る城戸司令派の意向がうまく作用しなくなる。それを危惧したための争奪戦というのが今回の事の発端だ。」

ガコン、という音と共に風間が答えた。
手に取ったものを絵梨に差し出す。

「……これは?」
「カフェオレだ。」

ご丁寧にプルタブまで開けられた缶を受け取る。カフェオレが何なのか気になるところではあったが、何だかもうあれこれ質問するのも億劫になってしまったのか、一言「ありがとうございます」とだけ言ってそっと口元に近づけた。

「あ……暖かい……。」


手元からじんわりと伝わっていた熱が、少しずつ安らぎを与える。
心地いいなと思ったが、同時にまだこの件が全て片付いているわけではないと、冷静に考えていた。

「風間さん達も、迅を待っているんだよね。」

「あいつのことだ。今頃お偉方と話付けてるとこだろうしな……と、噂をすればってとこか?」

不意に鳴った携帯の着信音はどうやら太刀川のポケットから聴こえてくるようだった。

「黒トリガーの件か? ……は? ちょっと待て国近、命令が解除されたのは分かるが……」

明らかに動揺する太刀川を横目にきょとんとする絵梨と、少し眉尻を上げた風間。


「黒トリガー奪取の命令は解除された。迅と上層部の取引によってな。
……あいつ、風刃を本部に返すと言ったらしい。」
/ 74ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp