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ワールドトリガー 瞳に光を

第8章 真逆と決定付けるもの


こうして無事に目的を達成した絵梨だが、状況はあまりよく分かっていなかった。

「黒トリガー保持者が味方になるというのに、何を拒む必要があるんだろう……。」


絵梨は1人、誰もいない薄暗い通路をゆっくり進みながら、なんとなく人の気配がする方へと向かう。

「何はともあれ当事者になってしまったことだし、事の顛末を知る権利ぐらいあってもいい……よね?」

「お、誰かと思ったら絵梨さんじゃん。」


迅から教わった会議室までの道すがら先程合間見えた2人の姿を見つけた。

太刀川と、風間だった。
太刀川は軽く挙げた右手をひらひらと揺らし、緩く手招きをしているようだった。

「こうしてちゃんと話すのは久し振りだな……って、そういやこっちでのこと、あんまり覚えてないんだったか?」
「記憶の混濁と、改ざんの可能性があるからな。」
「そんな状態でよくまあ負かせてくれたもんだよなあ?」

戦闘が終わったばかりで、尚且つ敵同士だったというにもかかわらず、風間の側で笑う髭の男の顔は間の抜けた感じだ。
これが攻撃手ランク第1位の余裕というものなのか、それは些か微妙な反応をせざるを得ないような、いまいち複雑な心持ちになのだろう。

「そんなに呑気に話せる状況でもないでしょう……? さっき散々戦ってたっていうのに……」

実際少し遠慮がちに質問する絵梨だったが、当の太刀川は態度を全く崩さなかった。

「戦ってたって言っても結局命令だったと言ってしまえばそれで終わるような話だからなあ。特別構える必要もないだろ。な? 風間さん。」
「そうだな。」
「それよりそんな堅苦しいのとかやめてくれて構わないぜ? 俺一つ年下だし。」
「そ、そう……なんですか?」
「え、そこまで忘れちゃってんのか……そんなに重症なのか? まあそういう事だし、敬語もやめようぜ? 戦闘中はバリバリタメ語だっただろ。」
「あ、それは癖で……。戦う時は要件を手短に伝えられる方がいいから文字数を減らすために敬語はやめてるんです。」

八つ裂き気味に話しかけられながら、ぎこちなくそれに答える絵梨。

戸惑いつつも太刀川と話を続ける中、太刀川とは対照的に無言を貫く風間が視界をちらつき、戦闘時の会話の事もあって気になっている様子だった。

そして太刀川との話の中で、"絵梨"はどうやら21歳で、風間とは同い年だということが判明したのだった。
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