第8章 真逆と決定付けるもの
「成る程、死角に仕込んでいたのか。」
風間は少し驚いていたが、すぐに絵梨がどうやって攻撃を防いでいたのか看破して見せた。
「銃器のみでブレードを防ぐ事はまずありえない。ライトニングを軸にスコーピオンを出していたのか。
ブレード自体が小さい上、銃に沿って形成する事で強度は高い。」
事実、風間のスコーピオンにはヒビが入り、新しくトリオンを消費して生成しなければ、戦うのは難しかった。
「そっちが聞いてきたのに、私の回答は無視するわけね。」
「……」
絵梨を試しているかのように向けられる無言の視線はスコーピオンより鋭くて痛い。
「まあいい。もう終わらせる。」
「何?」
風間が後ろに引こうとする素振りを見せたその瞬間を、絵梨は見逃さなかった。
風間の背後に大きく展開するシールドが逃げ道を塞いだ。
「なんだこれは……。エスクードですらこの大きさは……」
未だ重心を手元に置き、尚且つ一瞬意識がそれた風間。
絵梨は手元のスコーピオンを消し、更にライトニングの構えを解く。
自然に振り下ろされる剣に右腕を取られる絵梨だが、そんな損傷はもう見えていなかった。
足元からスコーピオンを出して地面を潜らせ、風間の足を固定する。
「これは……!?」
呆気にとられる風間を他所に、絵梨はもう余裕の笑みを浮かべてみせた。
「風間さんさ、折角私が援護しかしてないって見抜いたのに勿体無いことしたね。今は例外だとでも思ったの?」
見事な形勢逆転だが、風間が目を見張り、驚くのも無理はないほどに強烈な力だった。
先ほど迅を追い詰めたガレージをたった1人で再現した様な形になっていたのだから。
それも、辺りの障害物も全く利用せずに。
そして、風刃の遠隔斬撃が絵梨もろとも掻き切っていく。
絵梨はこれを待っていたのだ。
「残念。ハズレだよ。」
そして基地めがけて光の道が3本、夜空にかかったのだ。