第8章 真逆と決定付けるもの
しばらくの間、戦闘に相応しい無音の圧力がかかっていたような世界が広がっていた。
苦しくもあり、同時にどこか心地よいような剣の重さと、その間を縫って放たれる、歪みのない銃声。
けれどもやはり誰もが予想できていたように、風間が優勢のまま事は運ばれていく。
様々な言葉を交わしたその後から、風間の攻撃はさらに激しさを増している。それはまるであの時の動揺と苛立ちをポテンシャルに変換しているようであり、同時にあの言葉には風間自身に影響を与えたのだという事実にも繋がっていた。
そんな風間の攻撃を避けながらにも絵梨はいつこの攻防の状態を逆転出来るものかと機会を伺い続ける。
ライトニングで誰もいない空へ銃声を打ち上げる。
その弾道に合わせて風間を誘導すると、弾道はそれぞれ別々の方向へ分かれながら、四方を囲むように風間を狙う。
シールドとブレードでその攻撃をいなし、ダメージを最小限に抑える風間を横目に、絵梨はグラスホッパーで上へと跳躍。
風圧に耐えながらも体制を整え、地上の風間へ向け通常威力の攻撃を繰り返していく。
自身の跳躍力が途切れるタイミングを見計らいつつ、風間の動向を確認する。
風間は軽い身のこなしでその銃撃をいくらか交わしきったところで突然絵梨の元へと跳躍していく。
「っ!?」
風間が思わず呼吸を乱す。
先程絵梨は通常弾に隠すようにグラスホッパー投げていたのだった。
トラップがうまく作動したところで、落ちる絵梨と飛び上がる風間がすれ違う。
想定外ながらも素早く反応し体制を整えた風間はすかさずそのブレードの切っ先を絵梨に向ける
風間からの素早い斬撃を絵梨もまたシールドで受け止める。
そして絵梨が着地した時には、すでに風間の姿はなかった。