第8章 真逆と決定付けるもの
絵梨は、風間の持つスコーピオンが眩しいほどに輝いて見えていた。
風間は、絵梨の足元から漏れ出すトリオンを挑発の様だと感じていた。
2人が立つその場には、何もない。
崩れた建物、ガラスの破片が所々にちらついて見える、警戒区域のとある一角にて、お互い武器を手にしながらも構える事なく相手の出方を伺っているようだ。
「お前は何故玉狛に付いた。」
「…聞いてくるのはそればっかり。他に何かないの?」
静かな言葉の攻防が過去の2人の姿を物語る。
絵梨は姿が似ているという本物の彼女と風間の関係が未だ掴めないでいた。
記憶の混濁があるといっても誤魔化せる部分は限度がある。
少なからず周りの人間も違和感は感じているはずだ。
なのにボーダーの人間は何故かそれを無理やり受け入れようとしているようにも見えた。
絵梨はそれが全く理解できないでいた。余計に問題をややこしくかき混ぜているようで気持ち悪い。
「風間さんにとって今の私は『絵梨』に見えている?」
絵梨のその言葉に風間はピクリと眉を揺らす。
たとえ自身の立場を危うくしかねない質問だとしてもはっきりさせておきたかった。
風間と、本当の絵梨の関係性を。
「………………。」
風間は何も言わなかった。
聞こえていないとでも言うように澄ました顔で。
「…そう。」
その沈黙が答えだと、絵梨はライトニングを装備し直し、銃口で真っ直ぐ風間を捉える。
「どっちが"強かった"んだろうね。私達。」
意味深な絵梨の呟きを境に、風間も両手に握るスコーピオンを構えて絵梨へ向かって飛びかかる。