第7章 異例の弾丸
「えっ!?」
絵梨が2発目を放ったのは、そのときだった。
光は素早く進むと角ばった弾道を描いていく。
着弾したのは、ステルスを発動していた歌川の左腕。
隠密トリガー起動中の防御は不可能。トリガーの弱点をついた見事な襲撃だ。
「…レーダーか」
風間が舌打ちを一つ。しかしそれだけで切り替えを見せる。
戦況はいよいよ終盤へと差し迫る。着々と迅を追い詰める太刀川の様子を伺いつつ、風間隊2人はまたしても動き出した。
「風間さん、良いんですか?絵梨さんの射線に入っている様ですが…」
「前を見ろ。もう迅の逃げ場はない。」
絵梨は隠密トリガーに臆する事なく立ち向かう。たった今、姿なき2人を徹底マークしている、間違いなく脅威だ。
それでも風間はわざわざ絵梨を仕留めに動く事はしなかった。
絵梨へと人員を割く事こそが最大の穴だと、確信していたから。
「まずは迅を仕留める。」
3度目の狙撃。煽り。誘導。罠。似ている様でそれらとは違うもの。
__その決断で間違いないわよね?
後悔しても、後はないから。
風間には確認する声が聞こえた様な気がした。
絵梨と風間。2人の覚悟を足して、掛け合わせて大きくなった言の葉の弾が、風間の頬に擦り傷を作った。