第7章 異例の弾丸
風刃が起動された事で戦況は片方に傾き始めた。
菊地原のベイルアウトや、絵梨の狙撃を受け、風間の瞳にはこの場の光景が先ほどの何倍も強く目に焼き付く。
「歌川、隠密戦闘の準備をしろ。」
「狙撃手との連携が取りづらくなりますが…」
風間隊の2人の会話を割くように風刃が牙を剥く。
歌川へ向けて放たれた光の帯は、見事に大きな傷を負わせる。
本来なら銃手や射手の間合いで斬撃を飛ばせる効果こそ風刃の強み、そして脅威となる。
しかし、間一髪のところで急所を避けると、2人は空気と一体化した様に視界から消え去っていた。
「三上、遠山の位置は把握できたか」
「既に移動を始めた様です。少しずつこちらに向かってきていますが、バッグワームを使っているので正確な位置まではなんとも…」
放っておけ、などと言いつつも、警戒を怠るわけはない。
未だ姿形を捉えられない絵梨。それどころか目的すら定かではない。
風間は歌川とともに民家の屋根から辺りの戦況を確認しつつ、気を見計らって奇襲の算段を着実に整えていく。
一方で絵梨もまた、次の段階へと足を運んでいた。
屋根から降り、建物に身を隠しながら。
そこに今は誰もいない。
誰もいないからこそ向かわなくてはならない。
「…隠密なんて意味ないのに。」
心なしか、安堵しているようだった。
ほんの少し口角を上げ、この先の出来事を思っているようだった。