第6章 繋がる事はない
「絵梨さん、お久しぶりです。嵐山隊隊長の嵐山准です。こっちは木虎、それから時枝。後、狙撃手の佐鳥がいます。」
あらかじめ絵梨の記憶の件については聞いていたのだろう。真っ先に口にした名前。単純に見えて、互いの存在を知る事は、団体戦であるなら重要だ。
「よろしく。その狙撃手君の位置情報だけど、後で教えてくれると嬉しいわ。」
各々周囲の警戒を怠らず、それでいてまだ余裕を隠している。
なんとも不気味な静けさだが、お陰で余計な感情を跳ね除けることが出来る。人はこれをいい緊張感と言うのだろう。
「おそらく、今度はこっちを分断しに来るでしょうね。迅さん単品を主力で仕留める。それが妥当な線だわ。」
真っ先に出てきた木虎の意見は、他の隊員の予想とも一致していた。どの部隊が誰の元へ来るのか、そんな事細かな詳細まで。
その点で言えば、絵梨は持つ情報が少ない分、対策力に欠けていた。
「私はどうすればいい?」
しかし絵梨自身はそれを恥じる事などしなかった。自身の弱点を受け止め、その弱点を補う術を選び取る。
彼女にとって戦闘とは生死をかけたものであり、功績を残す事が全てだった。
そんな環境で過ごしてきた中での癖というものが簡単に抜けるはずもない。
それがプラスになるかマイナスになるのか。どちらに転ぶのか。それはこれからの彼女次第だ。