第6章 繋がる事はない
迅が呼び出したという事は、まあそういう事だ。
たとえここで絵梨を呼ばなかったとしても、いずれこの戦いに参加していたという事。
未来を見ていたからこそ、絵梨の存在にも気付いていた。
それに、迅が未来を見ることなく、看破出来なかったとしても、いずれはレーダーでその存在を晒す事になったのだから。
絵梨はそのままゆっくり姿を見せる。そうして風間の前に立つと、その瞳は既に敵を撃つ時の戦闘モードに切り替わっていた。
「ボーダーって、こんなにも簡単に味方同士で諍いを起こすのね。信じられない。こっちの人間を信用出来ず、近界民を守るだなんて思ってもみなかったけど。」
「お前は元々、木戸司令派に付いていた。記憶が混濁しているとはいえ、極端に変わり過ぎたな。遠山。」
「それは記憶があればの話でしょ?今の私に関係ない。誰を仲間とし、誰を相手にするのかは、その事態に直面した私が判断するだけ。過去に何があろうと、これから何が起ころうと、今私が敵と判断したのは風間さん達だから。」
揺るがない思い。近界で実際に体験してしまった信用と裏切り。そして判断を間違えてしまった事で失ったもの。それらは全て絵梨の中での確固たる決意を作り出す原料となる。
「嵐山隊と絵梨さんが加わったとなると、こっちが負ける要素はないよ。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。ここで引いてくれると有難いんだけどな。」
「未来視のサイドエフェクトか。」
そして迅は最後の取引を持ちかける。こちらの優位を駆使して、遠征部隊を指揮する太刀川に。全ての判断を委ねる。
「面白い。お前の予知を覆したくなった!」
その答えは抜刀。即ち対立。
暗闇にかき消された夜戦の火蓋が斬って落とされた。