第6章 繋がる事はない
「その部隊複数を相手に、お前一人で勝てると思っているのか。」
「俺はそこまで過信してないよ。だからと言って引き下がる訳にはいかないね。あんたたちにとってはただの黒トリガーでも、持ち主にとってはたとえ瀕死の状態でも守り続けなきゃいけない大事なもんだ。」
両者共に無駄な諍いは避けたいはず。
派閥は違えど同じ組織で戦う仲間のはずなのだから。
出来る限り穏便に済ませたい。
それを許さない空気感はどこまで続いているものなのか。
くだらない。身内での争いほど醜くてくだらないものはない。同じ敵を撃つための組織がボーダーではなかったのかとただ疑う光景に絵梨は怪訝な表情で溜息ばかりつく。
ただしこのままでは乱戦は避けられまい。いくら黒トリガーの使い手であっても、A級上位のチームを幾つも相手に出来るものなのか。それはあまりに無謀。
絵梨にとって、ボーダーは救い。そう思っていたかった。それは実際近界にいた頃も思っていたのだ。
だが現実はこうだった。力の行使で身の上を知らない者から無理やり黒トリガーを奪おうとするその行為、許されたものではない。
絵梨から溢れる敵意の視線が、静かに遠征部隊へと向けられる。
「だけど実際、遠征部隊に加え三輪隊となると、いいとこ五分だな。勿論俺一人だったらの話だけど。」
迅が含みのある笑みを浮かべたその時、迅の背後から複数名が姿を見せる。
「嵐山隊、現着した。玉狛支部に加勢する!」
騒つく遠征部隊を他所に迅はもう一度意味有りげに笑みを見せた。
「絵梨さんも、いい加減出て来たらどうです?」