第5章 一方的な再会
「これで私の負けは無い。どうする?トリガーの選定はもう十分だし、ここで止めてもいいんだけど。」
ライトニングの構えを解いて、本気とも冗談とも取れる言葉を口にする絵梨は、何処か楽しそうでもあった。
「最初あれだけ警戒してたのに、随分簡単に話しかけるんだな。意外だな。」
「戦ってて分かったの。貴方は近界民だけど、私の知ってる近界民とは少し違う。」
その変った雰囲気の理由は簡単なものだった。
文字通りずっと戦い続けた絵梨。私情が混ざった戦闘を経験したのはいつぶりなのか。いや、そもそもそんな戦闘をした事があるのかすら不明だ。
今回は違う。強制ではない。
自分で決めて自分で戦った。自分の意思が存在している事実。
「随分短絡的な考え方だな。」
「別にそう思われたっていいよ。事実だし。難しく考えるのは苦手なの。」
「お前、つまんない嘘付くね。」
「わかった。じゃあ言い方変える。…嫌いなのよ。」
近界での暮らしを思い出せば、今でも表現は雲がかる。
それでも、ここにいる者達は信じてもいい気がすると、自分の意思を思い出して初めて分かった。
「さっさとラスト一戦終わらせましょうか。」
「ステルス起動」
すぐ様風景に溶け込み姿を消す。
しかし空閑も対応は早かった。スコーピオンの変形できる特性を活かし、ブレードを長くする。
耐久力は激減するものの、ガード出来ない絵梨にとってそんなものは関係ない。
ただ空閑の攻撃が通れば、それだけなのだから。
巧みな剣さばきを避ける事しか出来ない絵梨だが、どうやら勝負は決した様だ。
絵梨が姿を現したのは空閑の真正面。
…だったはず。
「残念でした。」
イーグレットは空閑の背後からトリオン供給器官を貫いた。
勝負は6-4 遠山絵梨の勝利にて閉幕となった。