第5章 一方的な再会
外で二人の戦闘を観戦する三人。その内の一人、三雲修は絵梨の戦闘スタイルを見て、明らかな疑問を唱える
「その、遠山さんは狙撃手…なんですよね。でも、模範的な戦い方ではないと言いますか…」
「まあ、遠山さんは昔からそんな感じだったからなぁ。不思議な人だよな。基本狙撃手は遠距離から味方を支援するポジションだ。」
その疑問に同意するのは烏丸京介。三雲の師匠。
二人の言う通り、彼女の戦闘スタイルは違和感を覚えるものであった。
狙撃手でありながら近距離戦を好む。勿論、訓練室で戦っているのだからスペースも限られてはいるが、相手との間合いを詰めて戦っているのが絵梨だった。
今も絵梨は狙撃トリガーを片手に動き回っている。
空閑からの攻撃を受けてしまわない様最低限の間合いは保ちながらもその距離は近い。
「前と比べると随分戦い方も変わってるけど、基本的なところはやっぱり同じね。これに関しては流石というべきなのかしら。」
「小南先輩、それって一体どういう事なんですか?」
「それはあんたも言ってたでしょ?狙撃用トリガーを使いながらも近距離で敵を迎え討つ。ボーダー創設以来の異端児。それが絵梨さんなのよ。」
まだまだ新人の三雲。以前の絵梨を知らないが故の疑問。
それを説明したのは小南桐絵。この中で一番長くボーダーに所属している彼女だからこそ言える事だった。
「移動系のオプショントリガーをフルに活用して、常に移動し続ける狙撃手。そりゃ有名だったわ。A級の近距離狙撃手(クロスレンジスナイパー)なんて呼ばれてたし。」
でもね、と間を空けて小南は言う。
勿論これはある意味当然の様なものだった。
その特殊性故に近距離狙撃手は彼女一人だけ。防衛隊員を引退した者にも、新人にも、この様な戦術を使う者など何処にもいなかった。
そうしている間にも勝負は続き、遂に5-4と決着が着く直前まで進行していた。