第5章 一方的な再会
模擬戦の形式は10本勝負。元々トリガーを試す為の戦いの為、中断してトリガーを入れ替えるのもありという特殊なルールの下、ここに立つ。
近界民が相手ともなれば、いちいちトリガーを試しながらの戦闘では確実に遅れを取る。
先程受けた説明を思い出しながら、自分の弱点を庇いながら戦う最良の戦略を探す。
「ライトニング!」
「…千佳と同じ狙撃手か。スコーピオン!」
互いに武器を構える。
絵梨の狙撃手に対し空閑は攻撃手。
近距離戦という事から、絵梨の圧倒的に不利な状況。
しかしそんなルールという枠の不利など、本人は気にしている様にも見えなかった。
風を裂く様な激しい動きは息をする事さえ忘れてしまう程鮮やかでもあり、そして恐ろしい。
グラスホッパーを空中にいくつも設置し、空閑を囲む様に移動し続けていた。その激しい移動の間にも銃声を響かせ、空閑は防戦一方となる。
タイミングを見計らい、イーグレットに切り替えれば、スコーピオンをいとも容易く破壊し
『空閑ベイルアウト 1-0 遠山リード』
先制を知らせるアナウンスがその名を呼ぶ。
しかしその後は、空閑も彼女の戦闘スタイルに慣れたのか、そのまま2戦もぎ取った。
流石に慣れないポジションの武器。加えて相手の学習能力の高さ。
残された対戦の中、後になればなるほど勝ち辛くなる事は目に見えてわかる事。
絵梨は右手を真っ直ぐ伸ばした。
「トリガーを追加したい。」
それだけを呟いた。