第5章 一方的な再会
「栞ちゃん、新入りを連れてきた。」
絵梨が案内されたのはオペレータールーム。そのデスクに向かい合う姿に子供は話しかけた。
「新入り?そんな話聞いてな…」
栞と呼ばれたその人は絵梨の姿を見るなり言葉を途切らせた。
そして何秒か後にデスクから離れると、
「絵梨さんじゃないですか!久しぶりー!二年振りですよね!」
いきなり抱き付いていた。
「すみません。記憶障害で忘れてしまって…あの、貴女は…」
「あ、そうだった。迅さんから話は聞いてたんですけど、嬉しくてつい。私は宇佐美栞。年下なので敬語なんて使わなくても大丈夫ですよ。前もそうだったし。」
「あ、じゃあ…その迅って人から連れてこられたんだけど、あの人は一体私の何を知ってるの?私が教える前から記憶がない事も知ってたし。」
「どこまで知ってるのかはわからないですけど、迅さんには未来が見えるんですよ。多分それで知ってたんじゃないですかね?」
そこまで聞いて、絵梨の中でようやく合点がいった。
それならば本人が教える前から知っていてもおかしくないのだから。
だとするならば、彼は一体何処まで知っているのだろうか。
彼女の何処まで見えているのだろうか。
「あ、そうだ。ここに案内したカピバラに乗ったヘルメットのお子様が陽太郎って言うんですけど、何か失礼な事しませんでした?」
「え、特には…」
「そっか、ならいいんですけどね。」
隊員と間違えていた事にようやく気付き、なんとも言えない表情の絵梨だった。
「じゃ、早速始めますか!」
そして迅の指示通り、絵梨がこれから使うトリガーの選定が始まる。
同時に、訓練室の模擬戦を終了するチャイムが響いた。