第5章 一方的な再会
木材と木材が擦れる音。
その音を受けて、足を一歩、また一歩と踏み入れていく。
誰かが居るのは確実。しかし付近に人の気配はなく、静かに時間だけが流れていく。
「すみません、誰か居ませんか?」
ずっとこうしているわけにもいかず、中に居るであろう人を呼んでみる。
すると聞こえてきたのは返事。…ではなく、トストスという若干重みを含んだ足音だった。
明らかに人のものとは違う足音に疑問を抱きながら、そうして彼女の前に現れた姿。
動物に跨った子供が1人。絵梨の前に姿を見せた。
「…」
決して安安と返事をする様子もなく、ただ黙って品定めするように絵梨を眺める子供。
そして絵梨も何を思ったのか、その子供にかけた言葉は…
「あ、あの、ここの隊員の方ですよね?私、迅って人に連れてこられたんですが…」
ふざけている様には見えない。ただ我々からすれば珍妙な光景でしかない。
子供を隊員と見間違うなど、果たしてそんな事があるものなのか否か。
「…」
案の定といった具合に、子供の方は黙り続けていた。
流石にこのままでは埒が明かない。
どうしたものかと考える絵梨。一方で子供は絵梨に背を向け基地の奥へと戻ろうとしていた。
「ま、待って!ではその、他の隊員はいらっしゃいませんか?」
「俺に付いて来い。」
どうやら案内してくれる様だったらしい。
少々腑に落ちない点はあったものの、なんとか基地内に進む事ができ、ほっと肩を撫で下ろす絵梨であった。