第4章 見えない誰か
「…誰ですか。」
「ああ、そうだっけなぁ。記憶無いんだっけ?改めまして。俺は実力派エリート迅悠一。」
先ほどの会議にも出席していなかった者が、既に記憶が無い事を知っていた。
迅と名乗るその人物は、その瞬間彼女の警戒対象へとなる。
「なんで知ってるんですか。」
敵意をむき出しに問うものの、迅は全く気に留める事無く、先ほど同様軽快に。
「まあ、それは移動しながらでいいでしょう。付いてきてください。」
そのままスタスタと足早に歩き出す。
勿論、彼女は質問の答えだけを求めて、自分でも気付かぬうちに後を追う形となった。
「どうして私の事を知ってるの?」
「帰ってきたばっかじゃ、寝泊りする所もないでしょう。うちの支部使って下さい。空き部屋ありますし。
遠山さんの素性はわかってます。俺のサイドエフェクトが言ってましたから。こっちのトリガーは支部で用意出来るように言ってあるんで、色々触って好きに選んでくれて構わないですからね。」
「ち、ちょっと待って下さい!」
サイドエフェクトと言っていたが、それが恐らく彼女の事に辿り着けた要因と断定してもよさそうだ。
迅は彼女の素性を知っていると、サラリと口にした。それは、上層部に話した偽りの素性なのか、それとも本当に本当の素性なのか。
「一体何処に向かってるんです?」
「いや、もう着きました。ようこそ、我らが玉狛支部へ。」
この者が信用に値する人物かどうかは、この場での出来事で決まるだろう。
「歓迎しますよ。"絵梨"さん。」
そして、所は変わって上層部の会議室へ。
「遠山絵梨を監視します。」
風間の姿がそこにあった。