第4章 見えない誰か
「はぁー。気持ちいいなー。」
帰って早々一波乱あった為に彼女にはまだ"帰ってきた"という実感がなかった。
しかし一度外へ出てみれば、そこには戦争が続き荒れた近界は無い。
時折トリオン兵が攻めてくるにも関わらず、平和といえる何かが感じ取れる。
透き通る風は頬を撫で、瞼越しにも分かる光の感触は艶やかで暖かい。
自然を感じ取れば、間違いなくここは自分が生まれ落ちた場所だと決定付ける。
彼女にとってそれが何より嬉しく、同時に何よりも寂しいものにもなった。
矛盾した二つの感情は、緩い涙を誘った。
「遠山さん!」
その時、背後から彼女を呼ぶ声がした。
「お久しぶりです。待ってました。」
振り向けば、そこには強い何かを持った誰かが立っていた。