第4章 見えない誰か
ここは組織を取り締まる上層部なのだという事を、ここまでの話し合いで理解した。
彼女が一番最初に出会った彼は風間と呼ばれていた。風間は彼女に関する事の経緯を説明する様求められると、淡々と話していった。
「メノエイデス出発後、遠征艇の足にしがみつく彼女の存在を確認しました。このままでは不時着の可能性もあった為、24時間後着陸し、彼女を保護しました。」
そこで彼女は、近界から足を離した後、どの様な経緯でここまで辿り着いたのかを知ったのだった。
「丸一日トリオン体を保ち続けていたという事か。」
「着陸した途端、すぐに変身が解けた様なので、彼女自身もギリギリだったのかと。」
また、メノエイデスからここまでに約3日かかる事も。
丸一日でも信じられないとは思うが、それより周囲が驚いていたのは、やはり誰かと間違えているからなのだろう。
おそらくその誰かは行方不明となっていた。
突然近界で見つかった。しかもトリオン量が多い。
しかし事実は、ここにいる彼女はずっと近界で育ち戦い、ここまで逃げ延びたということ。
何処か歯車が合わない会話だが、その噛み合わない部分を知るのは彼女だけ。
そして、知人と間違われている以上、いつまでも口を閉ざしてはいられなかった。