第3章 命懸け
「あれ、ここは…」
目が覚めるとそこは知らない空気が彼女を包む。
ずっと纏っていたトリオンは跡形もなく消え、戦で舞い上がった砂埃混ざる空気ではなく、整った清浄な空気が彼女の肺を満たしていた。
「目が覚めましたか。大丈夫ですか?」
おそらくこの部屋の管理をしていた誰かがいう。
しかし彼女はその質問には答えず、自分の疑問だけをそのまま漏らす。
「ここは何処なんですか?私は何故ここに?」
「ここはボーダーの医務室だ。」
扉が開く音と共に発せられた質問の答え。
その質問に答えたのは先程とは違う誰か。
しかし彼女はその声を、気配を知っていた。
「話を聞きたい。付いて来い。」
そしてその誰かに連れられ、彼女は自分の足で歩き始めた。