第3章 命懸け
それは過去の記憶。近界で過ごしていたとある日の事。
また攫われてきた玄界の人間。仲間と初めて出会った時の事。
無言の圧力がかかるその空間で、一人だけ明るく挨拶を交わす男子がいた。
共にいる時間が多かった事で、次第に心を通わせる様になった仲間たち。
それでも、初めて会った時の驚きは大きかったもので、私は本人に聞いてみた。
どうしてあんなに明るかったのか、と。
「あれはただの空元気だよ。自分を励ますための、な。」
あいつは言った。いつまでも俯いているわけにはいかない。悩むだけ勿体無い。いつか必ず帰るから、その時まで自分を失いたくはない、と。
その言葉は、私にも大きな衝撃を与えた。今まで仕方ないと割り切ってやって来たけど、初めて前を向けた。
あいつの明るい言葉が、私の暗がりに一筋の光を通した瞬間だった_____