第3章 命懸け
「…そうか。」
殊の外あっさり納得する誰か。
それは彼女が使う未知のトリガーを見ての判断だったのだろうか。
そもそも彼だって、こんな所に知人がいるとは思っていないだろう。彼もまた、戦いの中で冷静な結論を見出したということ。
「…ああ。わかった。」
仲間からの通信が届いた模様。
応答すればすぐに彼女に背を向ける。
ただ、その背に向け彼女は新たに浮上した疑問を投げつける。
「どうして私に攻撃しないんですか?」
2人が立つこの場所は近界であり、遠征してきた彼らにとっては、目の前に立つものすべては近界民だと思うのが自然ではないか。彼女はそう思っていた。
しかし、帰ってきた言葉は
「お前を敵と認識しなかった。それだけだ。」
たったそれだけだった。
知人に似ていたからやり辛いという理由ももしかしたらあるのかもしれない。
それでも、初対面であったものの、そんな理由で戦闘を避けるような人とも思えなかった。
その言葉に安堵する彼女自身が確かにそこにいた。
静かに広がる距離を置いて、彼女も遠征艇に急いだ。