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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第8章 Sell my soul


風に当たりながら二人だけで世界を眺める。
こんなにも美しい世界は今確かに存在し、しかしそれはメテオによって呆気なく崩壊しようとしている。
シャロンには、ヴィンセントがルクレツィアを止められず罪の意識に苛まれる気持ちがよく理解できた。

「ヴィンセント。私、ずっとあなたに謝りたかった。あんなに近くにいたのに、あなたを見つけられなかった事……」

ヴィンセントは、首を横に振りながら、彼女の頬を撫で付けた。冷たい革のグローブがなぜか温かく感じて彼女は微笑む。

「後悔してるの」
「シャロン……私は……」

ヴィンセントがマントを翻し、シャロンに相対する。

「……ヴィンセント?」
「すまない……君に、そんな思いをさせて……」
「違うのヴィンセント。私、謝ってほしくなんてないの。あなたが生きていてくれて、本当に嬉しかった。こんなことなら、もっと早くに探しに行けばよかったのに。それができなかったのは、私が弱かったから……」

シャロンの声が震える。
彼女の懺悔をヴィンセントは赦すだろう。だが、シャロンは赦しが欲しいわけではない。憎いのは、ヴィンセントの生存を信じ切れなかった自分。もしも、彼に万が一のことがあったなら、そんな事実を知ってしまうのが怖かった。そして逃げ続けていた。

「シャロン……君だけが悪いわけではない……。いや、君は悪くなどない……。君を探しに行けなかったのは、私も同じだ……」
「違うよ……」

小さく首を振るシャロンの頰を掌で包む。

「同じなんだ……。私は……罪の意識に苛まれ、悪夢を見続けることで自分を戒めているつもりでいた……。私は、卑怯だ……罪を背負っているのにも関わらず、片時も君を忘れることができなかった……」

ヴィンセントは彼女の頰から首元へ手を回しその身体ごと引き寄せる。暖かな温もりを感じ、二人は目を閉じる。

「愛する人との離別も、私に与えられし罰……。彼女ならきっと、どこでもうまくやれる。私のことなど忘れて……幸せに暮らしてほしい。私は……最後まで他力本願な自分を呪いながら……君がどこかで無事でいてくれる事を祈っていた……」
「私……あなたなしで、一人で幸せになんて……」
「シャロン……だからこれは私の罪なのだ……。あの選択が結果的に、君を苦しめることとなったのだから……」
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