第8章 Sell my soul
「クラウド、彼女は回復魔法の使い手だ。ガ系の魔術にも心得がある……。サポートもメインも可能だ」
「……勝手にしろよ」
「クラウド……」
「……悪かったよ」
クラウドがそっぽを向くと、活発な少女が駆け寄りクラウドとシャロンの手を取った。
「じゃあ、握手!」
「あっ、よろしくね、クラウド」
「……よろしく」
シャロンがメンバーに囲まれて質問攻めにあっている間、ヴィンセントはクラウドを捕まえ忠告する。
「それから、彼女は私の大切な人だ。失礼のないように頼むぞ……」
「だったら最初からそう言えばいいだろ」
「ただ守られるのは嫌なのだそうだ……。彼女にも思う所があるらしくてな。戦闘には加えてやってくれ……。戦力になるのは本当だからな……」
クラウドは興味なさそうに視線を逸らしている。
「ところで、セフィロスの彼女というのは……」
「過去を詮索するのか? お前らしくないな」
今度はヴィンセントが口を閉ざし視線を逸らした。
「おまえが心配してるような仲じゃないと思うけどな。昔、セフィロスと任務でニブルヘイムに行った時、アイツと会った……。セフィロスと親しげだったから『彼女か?』と聞いてみたんだ。そしたらセフィロスが俺の女だって」
「ほう……」
「シャロンは否定してたけどな……」
「そうか……」
二人共話を深く掘り下げようとせず黙り込んでしまったので、ヴィンセントがメンバーの元へ戻ろうとすると、引き止めるようにクラウドが言葉をかける。
「アイツのことが大切だから、側に置いておきたい…そういうことか?」
「ああ、その通りだ……。目の届くところに居なければ、守れないからな……」
「過保護だな。守りたいものを守れなかった時……後悔するぞ」
クラウドなりの忠告のようだった。しかしヴィンセントはひとつ息を零して神妙に答える。
「そんなことにはさせぬ……。万が一そうなったら……私も共に散るだけだ……」
ヴィンセントの覚悟はクラウドの心理を深く抉る。
その決断が強いのか弱いのかわからないが、今のクラウドにとって酷な言葉だった。
「重いな……あんたは」
「彼女には受け入れられている」
クラウドはその信頼関係を羨ましく思った。
同時に彼はなぜだか自分が情けないような気持ちになり、無力さに絶望を覚えた。