第7章 Blame
いつものように二人並んで湖のほとりで月を見上げる。
彼は、初めて出会った時のことを話し始めた。
「君を初めて見つけた日……、あの日は、満月だったな。……もうすぐ、この月も満ちる」
「そうね……」
次の満月。それは儀式の日だ。私が、永遠になるかもしれない眠りにつく日。一族の遺伝子を後世まで保存するための儀式。私はその儀式のことを彼には伝えられずにいた。余計な心配をかけたくなくて。けれど、その日は近づいている。このまま満月の日を迎えてしまったら……。彼には、伝えなきゃならない。そう思っていた。意を決して、話し出そうとした時、彼が少しだけ早く口を開いた。
「もうすぐ、親父の調査が終わるそうだ……」
「そう……なんだ」
「わかっていても、辛いものだな……」
「そうね……覚悟はしていたはずなのに」
ヴィンセントが無言で私の瞳を見つめてくる。私は何も言えず視線を逸らすけれど、彼はそんな私の体を抱き寄せて、耳元に囁いた。
「この時間を……君を……失いたくない」
ヴィンセントの腕に力が込められて、私の鼓動が大きくなる。
「私も……だよ……」
どちらからともなく唇を触れ合わせる。そして彼の手が私の腕を撫でる。体が泡立つような初めての感覚に戸惑う。これまでも吸い付くような激しいキスはしたけれど、いままでは彼が『婚前交渉は……』なんてわけのわからないことを言って離れていた。だけど今日のヴィンセントはいつも以上に艶っぽかった。熱い吐息を漏らして、首筋にキスを落とす。そして私を静かに地面に押し倒し、迷うようにじっと瞳を見つめた。
「……どうしたの?」
「……焦っていると思われたくない……」
「ええっ、わからないよ……。何か決まりがあるの?」
「いや……そうじゃないが……」
その時の私は、自分でも情けなるくらいに知識がなかった。彼が何をしようとしているのか、なぜためらっているのか。だけど、私は彼に何をされても拒むつもりはなかった。
「ヴィンセント……もうやめちゃうの……? もっとキスしよ……」
「……シャロン……」
ヴィンセントが迷いを捨てて私の体に覆いかぶさると、唇を奪い、ゆっくりと時間をかけながら私の口内を犯した。舌で上顎をなぞられると、ぞくりとする感覚に体が侵食される。そのまま何度も何度も舌を絡め合い、そして私はキスに続きがある事を初めて知った。
