第7章 Blame
ヴィンセントは消極的に視線を逸らす。
しかし、私はそれを問い詰めることができなかった。
「私の方も、ごめんなさい。おばさまがひどい事を言って。私も、止めることも出来ずに傷つけたわ……」
「そんなことはいいんだ。気にしていない。君も……色々なしがらみに苛まれているのだな」
「だけどそんな事関係ないわ。あなたは悪くないのに濡れ衣を……」
「気にするな。今日、君の気持ちが知れただけでも満足だよ……」
ヴィンセントが少し微笑んだように思えた。
どことなく過去形のニュアンスを含んだ口ぶりに私は少しの焦燥感を感じた。だけど確かに、私たちは一緒にいてはいけないのかもしれない。私が彼に災いを呼ぶ。今日の出来事は私にそんなことを考えさせる。
「もう、会わないほうがいいのかな……」
「……君が、そう望むのなら……」
「私の望みは……」
続きを口に出来ずにいると、ヴィンセントは黙って私の肩を抱いた。それが答えなのだろうと思った。彼は続きを言わせないためにそうしたのだと。
奥手同士の恋愛では、時にちょっとした一言がその先の運命を大きく左右する。私の次の言葉は諦めの言葉だったけれど、黙りこくってしまうよりずっとよかった。
「わかってる。またいつあなたを巻き込んで、危険な目に合わせてしまうかもわからないもの。ごめんね、ヴィンセント……」
「シャロン……そうじゃない……。私はむしろ、君が許すなら、君を守らせてほしいと……。ただ……」
否定の言葉を紡いだ後、思考するように顎に手を添えて、視線を外したまま話し出す。
「いつか……私は元いた場所へ帰らなければならない……。これ以上深入りすれば……互いに傷付くことになるだろう……」
「そう、よね……」
「たが……私は君を……このまま忘れるなど……」
向かい合い、見つめ合う。自然と頰に熱がこもってくる。
私を見つめるヴィンセントの瞳が揺らぐと、唇を少し開いて、私の何かを待っている気がした。だけど、私はどうしたらいいのかわからずただドキドキとしながら彼を見つめ返すだけでいた。
そわそわしながら見つめ合っていると、ヴィンセントの指が私の顎を少し上に押し上げた。同時に彼の顔が近づいて来て、私は反射的に目を閉じる。
唇に触れる温かな感触。今度は誤魔化さない。ヴィンセントの背中に腕を回してキスを受け入れた。
