第7章 Blame
微笑みつつも、うまく言葉を紡げず口を小さく開いたり閉じたりを繰り返していると、グリモアさんが両の手を組んでクッと口角をあげた。
「かくいう私の息子もあなたに好意を寄せているようでね」
「おいっ!」
「えっ」
慌てたヴィンセントがグリモアさんに睨みを効かせるが、グリモアさんは全く気にする様子もなくにこやかに微笑んでいた。
私は、ヴィンセントの想いを間接的に知る事になったけれど、それなら先程の海辺でのキスのことも合点がいった。あの時は混乱してはぐらかしてしまったけれど、私の気持ちは——。
「嬉しい」
「なっ……」
素直な気持ちを伝えると、ヴィンセントの頰はみるみる紅潮し、誤魔化すように顔を俯かせた。
「シャロン……少し……歩くか」
「うん」
ヴィンセントが私の手を引き、ランタンを手に取る。
「持って行くぞ」
「好きにしろ。私はもう休むとするよ。くれぐれも気を付けるんだぞ」
グリモアさんは手を上げて挨拶しテントに入って行った。
自然に繋がれた手が私に不思議なときめきを感じさせた。初めての高揚感。手を繋ぐという行為がこんなに嬉しく思えるなんて。
「月が……綺麗だ」
「そうね」
ヴィンセントが繋いだ手を解く。少し寂しい気がしたけれどすぐに彼の手が私の肩を抱いて引き寄せた。身体を密着させると、体温が上がるような感覚がした。彼の顔を見上げると目が合い、お互いに照れながら視線を外す。
「シャロン……。先程はすまない。私の父が、おかしな事を……」
「おかしな事? ヴィンセントが私に好意を寄せてくれているっていう……?」
ヴィンセントは改めて言われたことで再び照れたように視線を逸らしてしまった。
「それもあるが……」
「事実じゃないの?」
「そうではない……。だが、迷惑だろう……君には……色々な事情があるのに」
「私は、嬉しいって伝えたわ……」
「そう、なのだが……」