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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第7章 Blame


 翌日。湖のほとりで軽くストレッチをしてから湖面に腕を沈める。そのままぐっと水に手を入れ込み、体ごと沈める。美しい色彩の貝や海藻、魚も泳ぐ静かな湖。
けれども、もうすぐ私はここで眠るんだと思うと少し複雑だった。もしかしたら、永遠に見つけてもらえないかもしれない。身体の力を抜いて水面に浮かび上がる。
太陽の光が眩しくて、目を瞑る。
ふいに、遠くで誰かの呼ぶ声がした。

「シャロンー、来たぞー」
「あ! ヴィンセント!」

 バシャバシャと音を立てながら体勢を整えて陸を目指す。
服の重みにはもう慣れた。陸に上がり、服の裾を手で絞る。

「ごめんなさい、いつも一人だから、マイペースで……」

 スカートの裾を揺らして水気を切り、ガウンを羽織って髪をかきあげる。
ヴィンセントこれ以上を待たせないように走って近付くと、彼は瞳を泳がせてそのままそっぽを向いてしまう。

「あら? 少し顔が赤いわ。風邪……?」
「いや……平気だ。なんというか……君は……型破りな女性だな」
「え? あ、でもそのくらいの評価がちょうどいいかも。あなたは私を誤解しているみたいだから」
「……そういう所も……どこか神秘的なんだよ」

 今度は私の頰が染まる。
私は姫として、一族からも丁重に扱われてきたが、彼の言葉は一族のそれとは何か違った。

「あなたって誘惑的よね」
「遠くへの旅に出ると……どこか開放的な気持ちになる……」
「普段の生活とは違うから、別の人格が露見している?」
「そうだな……。もしかすると、今こそが本当の私なのかもしれないが……」
「難しい。哲学ね」

 ヴィンセントは微かに笑って地に座り込む。
私も一緒にその場に座り込むと、彼は手に持っていた麻袋から果実を取り出し、私に手渡した。

「今日は私の故郷で作られた果実を手土産に持ってきた。君に……」
「あ、食事は……」
「苦手だったか?」
「いいえ」

 儀式の時まで食事は制限されている。しかし、彼の好意を無下にはしたくない。一族のしきたりと友情。今の私にとってはどちらかといえば、目の前にいる彼のことが優先された。
肉体を美しく保存するための食事制限。一度くらい、平気よ。そう思った。
私は彼に手渡された果実に歯を立てる。赤い果汁が顎を伝う。ドレスが彼の瞳と同じ赤に染まる。それは二人の禁断の恋を象徴するかのようだった。
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