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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第7章 Blame


「あ……月、綺麗ね」
「月……? あぁ……そうだな」

 彼の隣に並んで誤魔化すように月を見上げれば、彼も一緒に月を見上げた。
しばらくして、隣に視線を移すと、彼は私の横顔を見つめていたのでぱちりと目が合う。急に恥ずかしくなった私は、俯いて自分の両の手を組ませた。

「祈りを捧げていたのか……?」
「ええ。一族の日課なの」
「一族の……」
「花の一族よ。知らない? 私たちの心臓は高く売れるの」

彼は私を見て首を横に振った。

「許されない行為だ」

彼の正義感ある言葉に嬉しくなる。私はかすかに笑いかけ、また月を見上げた。

「……私を疑わないのか……?」
「捕獲者じゃないのでしょう?」
「そうだが……。……君は少し……無防備なように思う」

 私が丸腰なのを見越してか彼がそんな事を言うので、私は彼に微笑みかけながら手のひらを空に向けた。腕に巻きつく荊。自在に操れるものだから、その気になれば人を絞め殺すこともできる。

「……初めて見た。魅力的な能力だな……。白い肌を傷つけないよう上手く操っているのか……」
「ちょっと……そんなに褒めないで。なんだか恥ずかしくなってきちゃった」
「褒めるところしかないが……」
「や、やめてよ……」

とは言ったものの、素直にそう言われるとやはり悪い気はしなくて、私はいつの間にか頰を染めていた。

「あなただって、とっても魅力的よ」

彼と目を合わせると、驚いたように瞳を大きく開いてから微笑み、私に相対した。

「ヴィンセントだ」
「シャロンよ」
「……また、来てもいいか?」
「ええ。私も是非会いたい」
「……それじゃあ、また明日」

明日。気が早いなと思ったが、嫌な気はしなかった。

「うん、また明日ね」

 笑顔で手を振り見送る。
私の人生には、男性と関わる機会が殆どなかった。免疫がないからか、いつまでも心にぽっと暖まったような感覚が残っていた。
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