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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第6章 finale


 シャロンの手が重くなる。
ヴィンセントは彼女が眠ったことを確認すると、安心して口元を綻ばせる。自分に気を許しているということが喜ばしかった。
しかし、彼女のボロボロに欠けた爪と破れた服を見ると、彼女の厳しい旅路が垣間見える気がして胸を締め付けた。空いた手で彼女のカフスに触れる。

「回復魔法ばかりじゃないか……」

 どんなに大きなものを背負おうとしていたのか。
こんなにボロボロになってまでたった一人でどこまでやれると思っていたのだろうか。彼女のことを思い返してみると、どんな無茶なこともしてしまいそうな危うさがある。何のためであるかは関係ない。彼女の正義感がそうさせるのだろう。

 太陽が昇り始めた頃、シャロンが目を開けると、飛び上がるように顔を上げ辺りを見回す。
そしてしっかりと握られた手を見て、安心したように息を吐いた。

「おはよう」
「おはよう……ヴィンセント、一晩中ずっとこうしてくれていたの?」
「ああ……気にするな。考え事をしていたら、こんな時間になってしまったというだけだ」

シャロンはしまったという顔をした。あんなことを言ったばかりに。ヴィンセントは優しいから、シャロンを不安にさせまいとしてくれたのだろう。

「もう起きるのか? もう少し眠っていてもいい時間だが……」
「うん……。ヴィンセントは本当に休まなくていいの? よかったら私、見張っているから少しでも休んで」
「いや……今は特に休む必要はない。君こそ、疲れは取れたのか?」
「うん、おかげさまで」

 浮かない顔でシャロンは身体を起こした。側にヴィンセントがいる。こんな幸せがが毎日続いたらいい。彼と二人で平和に暮らせたら。しかしそれは難しいことだ。シャロンもヴィンセントも、この世界の現状を被害者目線で悲観するだけなどということはしない。世界の〈今〉を思い彼女は軽いため息をついた。眠い目をこすっていると、ヴィンセントが静かに話し始める。

「君は強い……だからこそ無茶をしすぎるのだろうな。……私は間違っていたのかもしれない。……あの頃の姿が理想的だとは私には思えないが……今の君の状況を見ると、君はあのまま神羅で完璧に守られていた方が、幸せだったのかもしれないと……」
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