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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第6章 finale


「それは……あの時君が持っていたものだ。私の父が調査を終え帰路に着く前に、君はそれを御守りとして持って行ってほしいと私に手渡してくれた。マテリアだったのだな」

 シャロンの手の中で花の結晶が眩く光ると、次にそれは丸みを帯びた石へと変化した。
わけもわからず動揺するシャロンを落ち着かせるように、ヴィンセントが肩に触れる。

「シャロン。こうして私がここにいられるのは、君のお陰なんだ。……私はタークス時代、何度か奇跡的に命を救われた事がある。このマテリアの、君のお陰でな」
「私の……? でも、わからない。それって本当に私だったの?」
「……間違えるはずもない。短い期間ではあったが、あんなにも愛し合った人……。君を忘れることなど……決して出来ないだろう」
「愛し合った……」

 彼女はどうにも、セフィロスに言われた事がひっかかっていた。実験によって記憶を操られているならば、彼もまた同じである可能性もあるのだから。しかし、彼の話が本当なら素敵な事だと思った。

「……シャロン、私と共に来ないか? 君に会わせたい人がいる……」
「けれど私……私、セフィロスの所へいかなくちゃ……」
「彼に会ったんだな……」

シャロンは深く頷いて、そのまま俯く。

「私、彼を止めるわ。私が共にいることで、少しでも彼の恐ろしい願望を遠ざけられるのなら……。それで彼が殺戮をせずに済むのなら……。そうするべきだと思うから」
「……彼を愛しているのか……?」

彼女ははっと顔を上げ、ヴィンセントをじっと見つめ、少ししてから首を横に振った。

「そうか……。尤も、そうだと言われても、私はもう、君を一人で行かせはしないがな……」
「ヴィンセント……」
「なぁシャロン……、無理をしていないか? 自己犠牲は君の美徳かもしれないが、これはもはや君一人が背負うべき問題ではない……」
「でも、私にできることなんて、限られているもの……少しでも何かしたいと思って……」

言葉にした瞬間、涙腺が緩む。肩を抱き奥歯を噛み締め堪えようとするが、雫が頬を伝うのを止められなかった。本当は怖いのかもしれない。その後ろめたさをも包み込むようにヴィンセントは言う。

「……共に行こう、シャロン。私達の目的は一致している。……今度こそ側で君を守らせてくれ……これまで叶わなかった私の夢を……」
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