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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第5章 forbidden lovers


 セフィロスの言葉に偽りはなかった。彼女が次に地面に足を付けた時、目の前には忌まわしき神羅屋敷があった。しかしそれだけではない。辺りにはニブルヘイムの街並みがそのまま残っていた。まるで5年前の光景が夢であったかのように。

「どうした? 行かないのか?」
「いいえ……。私、少し混乱しているわ」

セフィロスは微かに笑って、腕で入り口を示し歩き出すよう促した。

「セフィロス……いつから飛べるようになったの?」
「私は特別だからな」
「あぁ、またそれなの……」

こう言う時のセフィロスはまともに答える気がない。
シャロンは追求せずに神羅屋敷に向かって歩き出す。
その足取りは重く、気持ちだけが先走っているようだった。心と身体のギャップがぎこちない動作を生み、足がもつれる。
そしてそのシャロンを支えるようにセフィロスがエスコートした。いつかこの場所へ来た時と同じように。

「セフィロス、ねぇ私、彼に会いたいのに……苦しい……」
「涙を拭け。安心するがいい、お前の知りたくない情報はもうここにはない」
「涙……」

 いつの間にか瞳に溢れた涙に手を触れる。
セフィロスの言葉にどのような意味が含まれているのか、理解するのは難しかったが、彼がいることでシャロンは進む足を止めずにいられた。
 地下へ下りると、屋敷のすえた臭いが弱まって、カビのような臭いとコンクリートの臭い。過去の記憶が呼び起こされるような気がしたが、なんとか平静でいられた。しかし、ある部屋の前でシャロンは立ち止まる。

「待って、セフィロス、ここは……」

シャロンが扉に手をかける。

「違う、似ているけど、ここにあったはずの実験機材がないわ……。この部屋じゃないのね……」
「何のことだ?」
「私が過ごしていた部屋よ。ここは牢獄のようね。私のいた部屋は取調室のような作りだったわ……」
「ここか?」

 セフィロスが反対側の部屋へ立ち入る。中にはモニターや薬師瓶が並び、更に奥に小部屋があった。
扉の小窓から中を覗く。実験棟らしくさっぱりとした部屋だ。

「そうだわ……ここは、私がかつて過ごした部屋。こんなに暗かったかしら」
「外を知らなかったお前にとってはこれが普通だったんだろう」

シャロンがここでの日々を思い出すと、ヴィンセントへの想いが募り胸が締め付けられるように痛んだ。
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