第5章 forbidden lovers
全ての部屋を見て回るが、ヴィンセントは見当たらない。
どの部屋も朽ちていたが、最奥の部屋はもはや扉までも抜け落ちて、人のいる気配はなかった。
「ここが最後の部屋だわ」
「見てみるがいいさ」
シャロンが歩みを進める。そこでは無造作に置かれた棺桶が不気味に彼らを迎えた。しかし、ヴィンセントの姿はない。
「いない……みたいね」
「フン、何者かが目覚めさせたのだろう」
セフィロスが蓋の空いた棺桶を一瞥する。
シャロンもよくよくそれを見れば、蓋が開いていたにしては埃も被っておらず中が妙に綺麗すぎた。
「他の棺桶に引っ越したなんてことはない……?」
「お前の声を聞いて黙っていられる程度の関係だったのか?」
シャロンは目を輝かせてセフィロスを見上げる。
「本当に、ヴィンセントはここにいたの?」
「そのはずだが」
それを聞くとシャロンは嬉しそうに胸に手を当てた。控え目でありながら心の底から笑っていた。
「でも、どこへ行ってしまったのかしら……」
「検討はついている。だが、この推測が正しいとすれば、旅の目的は……」
セフィロスがシャロンを真っ直ぐ見つめる。
無言であるはずなのに、その瞳は言葉以上に何かを訴えかけていた。
セフィロスの想いがわかったわけではない。しかし彼の瞳はシャロンの胸を切なく締め付けた。
「シャロン……私は北へ行く。村を越え、遠く離れた最果ての地へ」
「セフィロス? そこになにがあるの?」
「リユニオン……帰るべき場所……お前も来るといい」
「リユニオン? 帰るべき場所? 一体何のこ——きゃっ」
何も理解できずはてなを作るシャロンをセフィロスが抱え上げ一気に地上へ登る。
屋敷の外へ出ると、シャロンを下ろし、再び向き合う形で語りかける。
「北へ向かえ。奴らは私を追ってくる。お前も北へ向かえばいずれ」
「奴らって? セフィロス!」
シャロンの問いに答える間もなく、セフィロスは飛び立って行ってしまった。
残されたシャロンは、セフィロスが向かった先を見つめ困惑した表情を浮かべていたが、彼女は決断していた。
「北へ……」
シャロンは前を見据え、歩き出した。