第5章 forbidden lovers
シャロンの眉間に深いシワが寄る。確かに、普通の人間ならば致命傷。
しかし、彼女はすぐさま自分の身体に起こった異変を見てセフィロスの目的を少しだけ理解した。彼がその気になれば身体を割いてしまうことさえ可能であるのに、なぜわざわざ傷付けるに留めたのか。
彼女の深く斬り開かれた皮膚を荊が這い始め、傷口を縫い付けて行く。
セフィロスがゆっくりとシャロンに近付き、肩に触れる。
「いや……」
セフィロスに触れられると、ニブルヘイムを思い出す。
シャロンは体を捩り抵抗するが、自分のその行為のおかげで、かつてセフィロスからかけられた言葉が頭をよぎった。
『お前も俺を拒絶するのか』
セフィロスの悲痛な表情が脳裏に蘇る。
神羅屋敷での出来事が鮮明に思い出され、彼女は身動きを取れずに目を瞑った。
「シャロン。その一瞬の気の迷いが命取りとなる。以前も教えた筈だろう? 何故お前はそうなんだ。無防備にも程がある……」
セフィロスが嘲笑するように口角を上げると同時に、シャロンの身体にはヒヤリとした感触がして、身体を包む荊が斬り落とされた。
彼女は我が目を疑った。深く抉られた傷口はいつの間にか縫合され塞がっていたからだ。
「……これは……」
「人ならざる者」
知っていた。人ではないということくらいは。シャロンは冷静になってセフィロスの言葉を解釈する。
「わかってる。私は神羅で実験体として生きていた。肉体改造を施されたのでしょう」
「それ以前からだ。お前は、生まれたその時から既に人を超えた存在だったのさ」
シャロンは切なそうに目を伏せた。
孤独感のような、絶望感のような説明し難い感情がシャロンを包み込む。
「だからお前は特別な存在……」
セフィロスが呆然とするシャロンの身体に手を伸ばす。
彼を無視するようにされるがままになる彼女を見てつまらなそうに眉間にシワを寄せると、首筋に舌を這わせて舐め上げ、耳元にキスをした。
淫猥な音にようやく彼女がびくりと身体を弾ませると、セフィロスは飢えたように唇を舌でなぞった。
「そうだ……反応がなければつまらん」
「やっ……嫌っ」