第4章 砂時計
シャロンの頭の中で失われていた古い記憶が呼び起こされる。
ヴィンセントが言っていた話。ジェノバ・プロジェクト。シャロンは本棚に目を通して、ジェノバ・プロジェクトに関する書類が並ぶ棚を見つける。
そして、今までしていた嫌な予感の原因がそれであるとわかった時、やはり後悔したのだ。
「シャロン……何を見ている?」
「何も……」
言うが早いか、セフィロスはシャロンの視線のあった先にある資料を手に取る。
「プロジェクト・S」
「セフィロス……」
「いい。わかっている。何も言うな。俺の母親の名も、ジェノバだ……」
「違うわセフィロス、あなたの母親は」
「何が違うんだ?」
セフィロスは冷たい目でシャロンを見下す。
シャロンは持つ限りの記憶でセフィロスを鎮めようと言葉を紡ぐ。
「あなたの母はルクレツィア。とても美しい女性で」
「それが何だと言うのだ。その女はただの入れ物にすぎない。違うか? 実験に利用されたただの道具」
セフィロスはシャロンに目もくれず資料に目を通していく。
「違う、ルクレツィアはあなたを大切に思っていたのよ。道具だなんて」
シャロンはセフィロスの関心を資料から逸らしたくて腕を揺する。しかしそれは間違いだった。
「だから、それが何だと言うんだ。その女が仮に俺を愛していたとして何になる? お前は俺がお前を愛していると言えば俺の気持ちに応えるか?」
セフィロスが資料を机に置くと、シャロンの腕を引き机の上に押し倒した。
「愛せば、必ず応えが返されるのか?」
「そういう事じゃ……いやっ」
シャロンの喉元を荒々しく掴み、衣服を乱す。露出した肩に唇を落とすといやらしいリップ音が響く。シャロンは抵抗しセフィロスの身体を押し返すが、力では敵わなかった。
セフィロスの腕が胸に伸び、服の上から柔らかい乳房に触れる。シャロンの手足の先から血の気が引いた。セフィロスがこのような行動に出るとは。可能性として全くない訳ではなかったが、油断していた。
「どうなんだ?」
「ごめんなさい……」
「ルクレツィアなどという女には、一度も会った事はない」
シャロンはハッとした。彼から感じる寂しさ。この人は、本当は寂しくて、しかしそれを表に出すことが許されなかった。英雄という枷に縛られていたから