第4章 砂時計
シャロンは結局根負けして彼を家に招いた。
シャロンの隠れ家は本当に質素で、必要最低限の生活を営んでおり、唯一の彩りは所々に飾られた花のみ。しかしその花さえもどことなく寂しそうに感じられるほど生活感がなかった。この場所は仮の拠り所、そんな雰囲気が漂う。
「お待たせ」
シャロンがゆっくりと、セフィロスの元へ食事を運ぶ。
パンとスープとサラダ。朝食のようなメニューだが、具沢山のスープからは湯気が立ち食欲をそそる香りを漂わせている。
「一人分の食材しかストックしていなかったから、質素で悪いけど……。あなたは肉体労働だからお肉も食べたいでしょうに」
「いや、美味そうだ。気を使わせてすまなかったな」
意外に謙虚なんだなと感心しながらシャロンは椅子に腰かけた。
食事を口に運びながらセフィロスをぼうっと見つめる。なんとも行儀の良い上品な食事の仕方で、一見非の打ち所がない人とはこのような人のことを言うのだろうか、などと彼女は考えた。そんな視線を感じ取ってか、セフィロスが食事の手を止め今度は逆に彼女を見つめ返す。
「お前は美しいな」
女ったらしな所は欠点だ。と彼女はため息をつく。
「何を言うの。そういうのはナシでしょう」
「お前、何者だ? いつからここに住んでる?」
「……話せば長くなるわ」
シャロンは食事の手を止めてセフィロスに忠告する。
自分の過去話など、面白味もない暗い話ばかりだ。それに、思い出したくもない。
「かまわんさ。人の人生、長いのは承知の上だ。ただ俺はお前に興味があるから知りたい。無理強いはしないがな」
セフィロスの優しい微笑みが、シャロンの心を少しだけ動かす。神羅の社員相手だ、多くは語れない。だが彼には、神羅という会社を切り離し、ただの一個人として信用してみたくなるような、妙なカリスマ性があった。
「でも、どこから話せばいいのやら……」
シャロンが顎に手を当て悩んでいると、セフィロスが質問をぶつけ話を聞き出していく。
「お前は、ここへ来る前はどこにいたんだ?」
「ニブルヘイムの神羅屋敷よ」
「すぐ近くだな。危険はなかったのか?」
セフィロスは食事をしつつも相槌をうち、どんどん質問を投げかけてくる。