第4章 砂時計
「おい、話には続きが……」
「知らない」
「なぁ、物事には順序があることくらい俺にもわかってるさ。悪気は無いんだ。お前の怒った顔が妙に可愛らしくてつい……許してくれないか」
「しつこいっ!」
シャロンが小石を拾って振り返りざまにセフィロスに投げつける。しかし、セフィロスはそれを簡単に掌で受け止めかわす。会って間もないというのによくもここまで嫌われたものだと彼は溜息をついて、再び交渉する。
「わかった。泊めてくれとは言わない。少し話がしたい」
「私はしたくないけれど……」
「シャロン……これも何かの縁だろう。お前、神羅の被害者なんじゃないのか?」
シャロンがはっとセフィロスを見つめる。なるほど、彼は神羅の社員。荊棘の能力を見れば、神羅の被験者であったことを推察してもおかしくはない。
「そうだったなら、私を殺しますか?」
「いや……そんな任務は請け負っていない。ただ、お前にいささか興味があるだけだ」
ふと横を向いて口角を上げる。月明かりが彼の横顔を照らすと、脳裏に別の情景が浮かんで妙な気分がした。
「任務なら殺す?」
「さぁな……お前次第というところか」
からかっているわけではなさそうだった。シャロン次第というのは、生かすか殺すかは彼自身の正義が決めるということなのだ。
その言葉から彼はただの神羅の犬というわけではないらしいということがわかる。
「……なんだか、私もあなたに興味が湧いてきたわね」
誰かに似ている。人離れしたセフィロスの美しい横顔に様々な記憶を交わらせる。
何処かで誰かに繋がっているような妙な既視感。何かが引っかかるのに、答えが見つからない。
シャロンはセフィロスに危険な香りを感じながら、無意識に引き込まれていた。もっと彼について知る必要がありそうだと。
知った先に、愛する人がいなくとも、いつかは進まなくてはならない。
ヴィンセントが守ってくれた命に意味を持たせるために。この出会いは転機なのかもしれないと、彼女はぼんやり考えていた。