第4章 砂時計
服越しに、胸元に仕舞われた小刀に触れる。
「フッ、そうだな。そんなことをすればこの刀が俺の胸を貫くかもしれん。だが……」
シャロンはセフィロスに上目遣いで睨みをきかせる。こんなに自然に触れてくるとはやはり手慣れている。シャロンの目が離れろと訴えるが、セフィロスは気にする様子もない。
「腕に自信があるようだが、男の力に敵うと思うのか?」
セフィロスが強引にシャロンの手首を掴み身動きがとれないように抱きよせる。こうなればさすがにシャロンも身を捩らせて抵抗する。
「いや」
「誘っているようにしか聞こえないな」
セフィロスが恍惚とシャロンを見つめ空いた手で頬を撫で付ける。しかしシャロンは逃げるように顔を背けるので、仕方なく空いた首元に顔を埋める。
「お前、甘い香りがするな……」
そこでセフィロスはふと気づく。自分の身体に無数の荊棘が這い、首に巻きつき始めていることに。
「フッ、なるほどな」
シャロンの持つ能力を目の当たりにし、なるほどこれならば武器がいらないわけだと理解し体を離す。
「何故あの時使わなかった?」
「あれは……油断していたのよ」
「……おい、やはり今夜は泊まらせてもらうぞ」
シャロンが体を起こしながらセフィロスを怪しむように睨む。泊めること自体は問題ないが、こんなことをする男を泊まらせるなど出来るわけがない。
「そんな顔をするなよ。この続きをしようというわけではない」
「……本当かしら」
「ああ。こんな能力を見せられてむざむざ襲いかかったりしないさ」
「信じていいのかな……」
なおも疑いの目を向けるシャロンにセフィロスは参ったというように掌を天に向けた。
「悪かったよ。お前の余裕がどこから来るものなのか知りたくなって、あんな真似を」
「うーん……」
「お前が欲しいのは本心だが」
「外で寝れば?」
どこまで人をからかうのかとシャロンは憤慨してセフィロスを置き去りに立ち去ろうとするが、彼はシャロンの後を追ってくる。