第4章 砂時計
口元に微笑みをたたえ余裕を浮かべるこの男は、ガタイはいいのだが、背も高く妙に色気があって美しい。本当にソルジャーなのか疑わしい程に。
太刀筋を見る限り、戦いのセンスがある人物であることには違いはないのだが。
シャロンが動く度長い髪が揺れる。しかし、男の髪はそれよりも更に長い。地面に触れそうなまでのロングヘアで、丁寧に手入れされていた。
「あなたの名前を聞いてもいい?」
「聞いてどうする」
「……何かと不便でしょう」
長い睫毛が風を仰ぐ。男はふと笑って、それもそうかとシャロンに向き直る。
「セフィロスだ。お前は?」
名を聞いた瞬間に吹いた風がいつもと違う気がした。
「……シャロンよ」
二人の会話に少しの間が空くが、シャロンがニコリと笑顔を見せて歩き出す。
「さっきのは特別に許してあげましょう。村に案内しないとね。ついてきて」
「いや……その話だが、案内はいい」
「え、でも迷ったのでしょう?」
シャロンがきょとんとセフィロスを見るが、彼はからかうように口元を歪め笑っていた。彼は迷ってなどいなかったのだ。シャロンは少しムッとしたが、ならば何故こちらが身支度を整えるのを待つ必要があったのか。訝しげに男を見る。
「おい、ところでお前は何処に暮らしているんだ? こんな森奥ではまたあのような魔物に襲われるかもわからないだろう」
「私はこの近くの小屋で生活しているのよ。さっきも言ったけど、この辺りの魔物は私の敵ではないから平気」
そう言って胸元に隠し持った小刀をチラつかせる。明らかに戦闘には不向きなサイズの護身刀だが、シャロンの堂々とした佇まいを見て何か戦術があるのであろうとセフィロスは推察した。
「一人でか?」
「ええ」
「なら好都合だな。今夜はお前の所に泊まらせてもらおう」
「はい?」
聞き返すが、セフィロスはじっとシャロンを見つめるだけで口を開こうとしない。
「あの、なんて?」
「お前が欲しくなったんだよ」
シャロンの腰に手を回して、再び口説こうとする。恥ずかしさで耳まで真っ赤になりそうだったが、シャロンもそんなに緩い女ではない。
「冗談はよして」
息を整えて冷たく言い放つ。しかし、セフィロスは離れようとはしなかった。それどころかその手はシャロンの胸元目指して体を這った。