第3章 いばらの涙
実験台の上には、シャロンの裸体、そしてその体を玩具のように弄ぶ宝条の姿があった。
「見えるか? ヴィンセント・ヴァレンタイン……。クク……まぁ見えていたとて、動けまい」
ヴィンセントは虚ろな目で、見えているのかいないのか、横たえたまま動かない。
「お前も本当はこうしたかったのだろう? ずっと触れられずに悶々としていたんじゃないのかね? ククク……この無駄な脂肪を手で寄せ集めて、貪り付きたかったんだろう?」
宝条はシャロンの豊満な乳房を両手で寄せ上げ、揺さぶると、見せ付けるように乳房の先端を指で捏ねる。
「そしてココに……」
宝条の手がシャロンの下腹部を移動すると、ヴィンセントの身体に力がこもった。
「やめろ……!」
「クク……ようやくのお目覚めか。失敗だと思っていたが、どうだ? この続きをしたくはないかね?」
「ふざけ——」
ヴィンセントが身体を起こそうとするが、具合がどうにも良くない。自分の手足、腕、身体を交互に見て、その理由を知ると、ヴィンセントは発狂するように声を上げた。
彼の身体はもはや人ではなくなっていた。
具合が悪いのは身体だけではない。頭痛も激しく、目眩がして真っ直ぐ立っていることが出来ない。
尋常でない異物感と、不快感。宝条への憎しみだけが身体を動かす動力であった。
ヴィンセントを襲う不快感の全てをぶつけるように宝条に殴りかかるが、その腕は虚しく宙を裂き、彼はとうとう倒れ込んだ。
「はっ、耐えられなかったか……。役立たずの虫ケラめ……。もうお前は用済みだな。さて……となればこの実験、どう続けるか……」
シャロンの身体を舐めるように見るが、先程までのような興奮は感じられない。改造されたヴィンセントがシャロンの身体を犯す姿を想像していた時のような興奮は。さて……と宝条が考え込んでいると、研究室の扉が勢いよく開かれる。
「ヴィンセント!」
「なんだ……部屋に入るときは断りを入れてから入れ」
「嘘……まさか、これがヴィンセント……彼に何をしたの!」
「彼? はて……その肉塊が誰かなど……思い出せんなぁ」
口論の相手は宝条の妻ルクレツィアである。
そしてヴィンセントの護衛対象であり、想い人であった。