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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第2章 cradle


 そしてそれから日も経たぬうちに、シャロンの部屋には変化が訪れた。
しかしそれは赤ん坊の話の続きではない。
シャロンの部屋の前を複数の足音が近付き、彼女の名を呼ぶ。

「ナンバーゼロスリー」

ヴィンセントの声ではなかった。シャロンは肩を落としつつ返答する。

「何かしら」
「外へ出ろ」
「……え?」

 耳を疑い扉の窓から外を覗こうとするが、扉自体が開きその必要はなくなる。コンピューターの灯りが部屋の中一杯に差し込むので、シャロンは眩しくなり目を瞑った。

「保護期間終了だ。外へ出られるぞ」

 今一つ判然としない。外へ出たいという欲求が芽生えはじめていたこともあり願ったり叶ったりな言葉ではあったが、あまりに急すぎる。
このまま外へ放り出されるのかと思うと不安がよぎったが、外へ出てヴィンセントに会えれば、あのプロジェクトを中止させることができるかもしれないと思い、前を向いた。
監視員に連れられて歩みを進めようとした時、視界に見覚えのある姿が入る。

「神羅屋敷へ」

白衣を着たその猫背の男は、片方の口角を釣り上げて言い放つ。

『神羅屋敷』
その言葉を聞きシャロンの表情は一転。不安そうな顔で監視員を見た。
監視員が視線を合わせることはなかった。

「どうした? 早く連れていけ」

白衣の男が監視員達を急かし、すれ違い際にシャロンに耳打ちする。

「言っておくが、棘を出したらこの場で射殺だぞ」
「棘? 何の事ですか? それに神羅屋敷って……何? あなた誰?」
「一度に質問するな……ククッ。屋敷には設備が整っている。そして今お前が私の名を知る必要はない」
「なぜ今になって?」
「はっ、知りたいか? 実は良いものが手に入ってな……」

 少し話しただけでこの人から漂う危険な香りに背筋が凍るような思いがした。
シャロンの顔からは血の気が引き、ただでさえ白い肌が更に青白くなる。

「しかし、あの男も面食いだな。シャロンにまで手をつけるとは……。さて、どう扱うか……。ククク……その美しい顔を醜く変異させるのも一興……ヒヒーッ!」

 わかっていたのだ。この場所から出る時、それはイコール自由などではない。この場所から出る時、それは本格的な人体実験に使われる時だ。
シャロンは目眩がして、その場に崩折れた。
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