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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第2章 cradle


「あの……、あくまで私の考えなのだけど……」

 考えても正解などわからない。シャロンは自分の考えをそのまま伝えることにした。ヴィンセントにとって有用な話であるかは別として。

「『彼女が幸せならいい』そう言うならば、もうそれ以外何も望まないことよ。彼女はもう別の道を歩き始めているのだから。もしそれ以外のものを欲するのなら、もっと、とことん干渉して、妨害し尽くすのよ」

 優しいヴィンセントには考え付かない思考だったのだろうか。驚いたような目つきでシャロンを見た。

「彼女が選んだ幸せを壊して、あなたが彼女を奪い、あなたが彼女を幸せにするの。今からでも、攫いに行くのよ……」
「……それが出来なければ?」
「出来ないなら、未練は捨てて、彼女から与えられるもの全てを諦める」

 ヴィンセントはその理屈を理解することはできた。だが、理屈だけではうまくいかないのが人の心というもの。未練がましいと思われても、ヴィンセントは思い悩む。

「幸せを願うくらいはいいのだろう?」
「友としての立場を貫くことができるのなら……。片思いのままでい続けるのは、きっと辛いけれど」
「ふ、手厳しいな……」

 人として、幸せを願うのは当然のこと。ただし、番の契りを結んだ彼女の幸せを邪魔しない。思いは自分の中に留めておく。当然といえば当然のことだが、自分の中だけで消化するには複雑な感情であるから、こうして口にして人に言われてみると、少しすっきりした。
 ヴィンセントは彼女に許されるだけで、自分のうちに留めていたモヤモヤとしたものが解消されるようだった。

「シャロン……。君がいてくれて良かった」
「本当? あなたがそう言ってくれるなら、よかった」

 シャロンは少し恥ずかしそうな顔ではにかんだ。
正直なところ、アドバイスに自信などなかった。しかし重要なのは、そのアドバイスを彼がどう捉えるかだ。自分の中で咀嚼して、彼自身が答えを導き出せればそれでいいのだ。
 この時のヴィンセントの気持ちは複雑でありながらも、前進の兆しを見せていた。
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