• テキストサイズ

FFVII いばらの涙 邂逅譚

第2章 cradle


「ところで……相手はどんな方なの?」
「よく……わからん……。何を考えているのか……」
「え? あなた、彼女が本当に幸せになれると思えてる? 彼女が幸せならそれでいいと言っていたけれど……。何もしないで見ているだけ? 責任に問われない安全な位置で傍観しているだけ……それでいいの?」

 ヴィンセントは俯き地を見つめる。
シャロンは口を滑らせたとは思っていなかった。あくまで第三者でいようとするヴィンセントになんとなく腹が立ったのだ。
 とはいえヴィンセントの考え方もわからないわけではない。もしかしたら自分もその立場ならそうやって身を引くのかもしれない。だからこそだろうか、すごく歯痒かった。
しばらくして、ヴィンセントが口を開いた。

「仕方がないんだ。彼女が選んだのは宝条で……。私は……嫌われてしまったらしい」
「ヴィンセント……」

 二人の間に何があったかまではわからない。でもヴィンセントがすっきりとしていないということはわかる。こんな時、他の人たちならなんと言うのだろう。自分が不甲斐なくなるほど、かける言葉が見つからなかった。シャロンには彼の優しさは痛々しく見えた。なぜなら自身を傷付ける優しさだからだ。ヴィンセントは更に自分を追い込むように言葉を紡ぐ。

「実は……彼女に愛を告げた……」

 シャロンの胸が少しチクリとした。しかし、今はそんなことはどうでもいい。
彼が何かを求めてここへ来ているのだから、それに気付き溶かしてあげたいと彼女は思った。

「勢い余って……。雰囲気も何もない、感情的になりすぎてしまったと今でも思う。だが、そんなことが原因で断られたのではない……。正直、彼女とは長い付き合いで、うまくいっていると思っていた……。だが、私が思い上がっていただけらしい。まさか、宝条からアプローチされていたとはな……」
「それじゃあ、ルクレツィア博士は本当に自分で決めたのね……。科学者同士ウマが合うのかしらね……」

 さて、何という言葉をかけよう。何が正解だろう。どうすれば彼を苦しみから解放できる? シャロンは頭の中で模索した。
 ヴィンセントはひとしきり話した後は黙り込んでしまう。視線は合わせないが、話を聞いていることを示すような態度で。
恋愛相談はシャロンにとって得意分野ではなかったが、必死に考えをまとめる。
/ 120ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp