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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第10章 叙情詩


 息を飲み、彼の名をつぶやくだけの彼女にセフィロスは嘲笑を零した。

「相変わらずだな。まだ俺に情けを向けるのか」
「私、星の記憶を見たの。私は屋敷を抜け出した後、あなたを攫いに屋敷へ戻り、宝条に再び捕らえられていたんだ。だけど……あなたが助けてくれた……」

セフィロスは、喉の奥で控えめに笑い、シャロンの頰を優しく撫でた。

「ただの気まぐれだ。俺は初め、お前をただの人さらいだと思っていた。だが、毎日拷問を受けるお前の姿を見ると、罪に対する代償があまりに大きすぎる気がした。毎日お前の事を考えていた。お前を思うと、俺の孤独は少し和らいだ」
「あ……。……私は……」

”この子を殺せるだろうか"
機があれば、ひとりでも戦うこと。彼らとそれを約束してきたのに、シャロンの手は劔に触れることなく震えていた。

「本当に俺を一人の人間として扱っていたのは、お前だけだったかもしれない」
「ひとりじゃない。セフィロス。あなたの母、ルクレツィアは、ずっとあなたを想い続けている。今もよ」
「お前はそればかりだな。フッ……今更遅すぎるさ」

セフィロスは、おもむろにシャロンの肩を掴むと、彼女を光の海の底へ突き落とし、黒い翼を広げ飛び去った。

「嫌、行かないでセフィロス……」

シャロンが遠く離れてから、セフィロスが衝撃波を放った。遠くのほうでクラウド達の声が聞こえ、シャロンは手を伸ばし足掻くが、 指先は砂状に溶け出し、泳ぐことが叶わない。足掻くほどに身体が霧散していく。

「嫌だ……セフィロス……!」
「泣くなよ。シャロン……私は何度でも蘇る」

シャロンへ最後に一言告げ、再びクラウドたちに衝撃波を浴びせる。それはまるで子供が悪戯を楽しんでいるかのようであった。

「シャロンがいるのか? 彼女をどこへやった!?」
「クク……女一人に戦わせるとは情けないな」
「御託はいい。質問に答えてもらおう……」
「星の中心部……神の領域だ」

ヴィンセントがセフィロスの後方へと目を向ける。たった今まで話をしていたのだから、今ならば追いつける。そう考えた。クラウドに目配せをすると、彼は頷き、許可を与える。

「無駄だぞ。生身の人間がライフストリームに落ちればただでは済まない」

ヴィンセントは、セフィロスの制止も聞かず腕を振るい、閃光が走る。
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