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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第10章 叙情詩


 ヴィンセントとの出会い、神羅での生活、人体実験。記憶と共になぜか痛みまでもが蘇り、どくどくと鼓動が早鐘を鳴らしていた。
精神を疲弊させ俯いていると、誰のものとも知れない柔らかな髪が彼女の鼻をかすめ新たな情景が流れる。

「ぼうや、こっちへおいで」
「誰だ、お前は?」
「私は……君の味方」

ボール遊びをしていた少年の銀髪はよく手入れされて、さらさらと風になびいていた。人とは違うあまりにも早い成長スピードは、彼が異質の存在であることを物語っていた。

「母さん?」
「!」
「そんなはずはないか……母さんは死んだんだ」
「セフィ……」

彼女はセフィロスに近づこうと木陰から隠していた姿を日の元に晒す。その瞬間電気弾に打たれ、身を屈めた。

「シャロン! 戻ってきたのか! クアックァックァ! お前は最高の素体だよ。さぁ、運べ!」
「くっ……宝条……。セフィ……ロス……」

少年は、まだ何が正しいのか理解できていなかった。崩折れ、研究員に抱えられ運ばれる彼女の様子をただただ見つめていた。

「シャロン……」

彼女の名を反芻し、少年は手にしたボールを置いた。


シャロン——

「シャロン」

聞き覚えのある声が頭に響き、シャロンは意識を取り戻した。
依然、辺りには何も見えず、ただ浮遊しているような状態であったが、その男の声だけははっきりと聞こえ、夢から覚めたことに気づいた。

「セフィロス! どこにいるの?」
「すぐ側に」
「わからないわ。どこなの?」
「お前が今いるのは星の中心部だ」

淡いグリーンが身体を包み、天地の判断もつかない。
だが、あたりを注視してみると、奥にひときわ輝く場所があった。
彼女はそこに意識を集中すると、少しずつ近付くことができた。

「なぜ来た?」
「世界を守るために」
「花の女神……その使命を思い出したか」
「そんなんじゃない。だけど、世界と、そこに生きるものを守ること、それは私自身の望みよ」

グリーンの中でひときわ輝く白い球体が、禍々しい樹木のようなものに覆われていた。そしてその傍らに見知った長い銀髪が見える。

「あいつと共に生きるために、か……」
「……そうよ。これが、あの子たちの求めているホーリーなの……?」

彼は振り返るとにやりと笑む。

「ああ。これを発動させるために、俺を殺しに来たんだろう」
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