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FFVII いばらの涙 邂逅譚

第10章 叙情詩


 シャロンの諭すような瞳がヴィンセントを射抜く。

「クラウドが私たちを地上に降ろしたのは、戦いに参加する前に、何のために戦うのか自分できちんと納得して選択してほしかったからよね……?」
「ああ」
「あなたの戦う理由はここにある?」
「有る……私の戦う理由は君だからな……」

手を伸ばし、シャロンの頰を手の甲で撫ぜた。
冷たい感触が彼女の心を揺さぶる。

「ヴィンセント……だったらどうして……」
「シャロン? ……君は私がルクレツィアのために戦っていると思っていたのか……?」
「そうじゃない、けれど……。あなたは何かあるといつも罪を口にするわ。忘れられない……忘れてはいけないと思っているのでしょう?」
「……忘れることは許されない……」

 ヴィンセントが視線を落としたのをきっかけに、彼女は再び歩き出した。
そして不安と憶測をぽつりつぶやく。

「罪を背負うことで、彼女を忘れずにいられる」
「待ってくれ。私がまだ彼女を愛していると……?」
「少なくとも、罪を手放そうとしているようには見えないわ」
「……妬いているのか」
「そうかもしれない……。私は、あなたがいつかルクレツィアの元へ行ってしまっても、仕方ないと思う」
「なぜ……そんなことを……」
「二人の絆の強さを知っているもの」

ひときわ大きな樹木の前にたどり着くと彼女は身を振り返らせ、作り笑いを浮かべていた。

「シャロン、確かに私はかつてルクレツィアを愛していた……。だが、その感情は過去のものだ……。彼女のことで悔いているのは……、私が護衛でありながら彼女を守れなかったこと……。私は、長年時を共にしていながら、最後の最後で彼女を理解してやれていなかったことを痛感させられた……」
「……守れなかったという点においては私も同罪ね……」

彼の罪はすなわち彼女の罪でもあった。同じ時代に生きて、同じ『神羅』という場所に存在しながら、ルクレツィアを止めることができなかったというのは事実。

「君に罪などない」
「どうして?」
「それは……」
「畢竟、運命を変えるのは本人次第というところかしら」

その本人に影響を与えられなかったことが罪なら、それは自惚れとも言えることで。
シャロンは小さくつぶやく。

「もう、赦して」
「赦す?」

彼女は頷いて、しかしはっきりとした返事はせず目を閉じた。
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