第1章 花寵腐月
同棲を始めて数週間。少しは慣れた修平との生活。
このキングサイズのベッドは毎晩のように揺れ、あたし達はその広い面積をフル活用してお互いを求め合っていた。
そして今日もまた、平日休みをフル活用して、1日中抱かれることになるんだろう。
「そろそろ挿れるか。」
朗らかにそう言った修平は、すっぽんぽんのまま布団を抜け出し、股間を立たせたままコンドームを取りに棚に向かう。なかなかシュールな光景だな、とイき過ぎた頭で夢見心地のまま笑った。
体を起こしてベッド脇に腰掛ける。眼前には滑稽な姿の修平、隣には粘液でぐちゃぐちゃになった大人のおもちゃ達。
ふと、レースカーテンで淡く閉じられた窓を見る。
晴れやかな日光が注ぐ窓の向こうからは、平日を行き交う車の音や、小さな子供の笑い声が聞こえて来る。
少し目を凝らすと、どうやら幼稚園帰りらしい男の子が、お母さんと手をつないで公園の桜を見上げていた。
「・・・お花見、したかったなぁ。」
マンション前の、小さくも桜の名所としてここいらじゃ有名な公園。通勤で前を通るたび、お休みの日にのんびりと、修平とお弁当を持ってお花見したいなーと思ってたんだ。
だから昨日の晩御飯の席で、修平に平日のんびりお花見デートを提案した。
なのに修平の返事はただ一言。
「明日1日真砂子を独り占めしたいからダメ。」
なかなかに酷いと思う。乙女心を踏みにじる言い草。
修平はいつもそうだ。同棲を始めてから、あたしは会社付き合いも友達付き合いも、そのほとんどを禁止されるようになってしまった。
それに飽き足らず、外出デートさえ禁止しようと言うの?
自分の欲望ばかり押し付けて、あたしを性奴隷のように扱う。あたしはいつも心の底に靄を溜め込んでしまうんだ。