第3章 岬町と涼介と奏音と。
意味のわからないマネージャーに"雑な"エスコートをされて、初めに来たのは『美咲神社』だった。
「俺の知ってる伝説の一つが、これだよ。」
紀伊は、目の前にある馬鹿長い階段を、指で指した。
私は反射的に、姉を思い出す。
だが、該当する伝説が、頭から出てこない。
(あれ......階段に伝説なんてあったっけ?)
私は、お姉ちゃんからよく聞かされた、伝説についてを思い出そうとする。
美咲神社の伝説...
(あーっもう!なんで思い出せないかしら......。お姉ちゃんの話は面白いし、何回も聞いてたからすぐ思い出せると思ってたのに..............)
すると、私の顔がよっぽど面白かったのか、目の前の爽やか笑顔のマネージャーはケラケラと笑いだした。
「ちょ...笑うことないでしょ!」
紀伊は「あーおもしれぇw」と言いながら、まだケラケラと笑い続ける。
私は「もういいでしょ......」と不機嫌な感情に笑顔を貼り付けると、またその顔を見て、ケラケラと笑いだした。
「いーかげんにぃ......しろぉっ!!」
「うぉっと!あっぶねえw」
いつもと違う笑顔で、私のハイヒールかかと落としを綺麗にかわすと、「まあまあw」と半笑いしながらなだめてきた。
「んなに思い出そうとせずとも、教えてやるよ〜」
「俺に勝ったらな。」
「は?」
紀伊はそう言うと、階段を向き、いつもと変わらぬ爽やか笑顔で走り出した。
私は、なんの勝負かすぐにわかった。
(こいつに教えてもらうのは癪だけど、負けるのはもっと癪にさわる!)
私は、体格や性別の差を忘れ、走り出したんだ。