第3章 岬町と涼介と奏音と。
「......例え方下手くそ。」
「うっさい!マネージャーの癖に生意気なぁ...!」
こいつにはわからないだろう。岬町には、思い出が詰まってることも、岬町には、いろんな伝説があることも。
「いや...俺も後方はすこしくらいなら知ってるよ?」
「は?...ってか私声に...?」
「んー?まあ行ってみる?」
(あっ..............スルー...、)
「それなら私が案内するわ。紀伊よりは知ってる自信あるし。」
「なぁにいってんだ。俺の方が知ってるっての。」
「は?その言葉。そっくりそのままあんたに返すわ。」
すると、紀伊は私の頭に手を乗っけて、髪をくしゃくしゃと撫でまわした。
「なによ......ご機嫌取りかしら?」と嫌味を言うと、「そうだよ?」と爽やかな笑顔が帰ってきて。
私は言うことが無くなってしまい、うつむく。
紀伊は「俺に案内させろよな?」とさっきまでと違う声で笑うと、私の手を取ってスタスタと歩き出した。
小さな通りで、口喧嘩かぁ、
「..............。」
いや。今はそんなこと考えるべきじゃあないよね。今は、紀伊とデート(嘘)するんだから。
私は、白い手を握ってハイヒールの音を鳴らし、岬町のコンクリートを踏み出した。