第11章 episodeⅠ橘 有雅
「ま、まあくん!?そんな荷物・・・何処に行くの!?」
2階の階段を降りて玄関へ行く途中で、母に見つかってしまった。
「…母さん、すみません、僕一人でやってみたいんです。」
「何言ってるの!出ていく気!?学校はどうするの!」
「…行くきます、最後まで。だから、お願いします。中学までは面倒見て頂けませんか。高校からは自分でなんとか…だから、」
「そんなこと・・・!」
「ママ、」
2階からすずが降りてくる。
「・・・鈴音!まあくんが!」
「・・・お兄ちゃんの言う通りにしてあげて。」
「す、鈴音まで・・・!何言ってるの・・・。」
「パパには私からも言う。お兄ちゃんの分は、私が頑張るから。」
「・・・そ、んな・・・」
「・・・、」
崩れ落ちる母と、その母の肩を抱く鈴音。そのまま何も言わずに家を出た。最後に見たのは、鈴音の笑った顔。泣くのを我慢しているような、胸が締め付けられる笑顔。