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久世くんには恋愛論を

第18章 恋愛論XⅣ







授業が終わるチャイムが鳴り、じゃあ今日はここまでな。とテキストを閉じる我らが数学教師。数分間の休憩時間に京ちゃんを探そうと席を立たった瞬間に、名前を呼んだその人がちょいちょい、と手招きをして私を手繰り寄せる。


「なあにチカちゃん、私忙しいんだよ」


あ?先生の忙しさナメんなよ、と私に毒を吐く彼は本当に今年29歳の教師なのか。


「これ、日向に渡しといて」


そう言って差し出されたのは授業のプリントと宿題。


「先生が渡してくださいよ」

「俺は色々忙しいんだよ」

「出た、大人の言い訳!」

「…お前なあ、」


はあ、とため息を吐くチカちゃんのことなんか気にもせず。


「京ちゃん今、
 可愛い系1年生男子に追いかけ回されてる」

「はあ?」

「逃げてるからチカちゃんの授業サボったの」

「腹痛じゃないのかよ」

「違う!むしろ元気に走ってる!」

「ちょお待て、そのフザけた新入りのせいで
 俺の授業サボったの?」

「はい」

「…クソ1年…俺の授業をなんだと思って」

「クソだと思ってますきっと!」

「宮原、プリント返せ」

「え?」

「ちょっと日向救出してくるわ」

「え?」



私の手にあったプリントをパシッと奪い取ったチカちゃんがあっという間に背を向けて教室を出て行った。


「………いや、まじか」


思いもよらぬ展開に、やってしまったかも。と変な汗が流れたまま、そこに立ち尽くして休憩時間終了のチャイムが鳴った。










END.


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